はじめに

「財政力の豊かな自治体ほどDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいる」──そう考える方は多いかもしれません。しかし、全国1,741市区町村のデータを分析すると、必ずしもそうとは言い切れない実態が見えてきます。

本コラムでは、総務省「令和6年度 地方公共団体における行政情報化の推進状況調査」のデータをもとに、財政力指数が0.4未満の自治体に焦点を当て、DXスコアとの関係を探ります。さらに、逆に財政力が高いにもかかわらずDXスコアが低い自治体も取り上げ、「財政力だけがDXの壁ではない」ことをデータで示します。

データ概要

財政力指数が0.4未満の自治体は全国に750団体あります。全自治体の平均DXスコアが53.1点であるのに対し、財政力指数0.4未満の自治体の平均は44.6点です。

しかし注目すべきは、財政力指数0.4未満でありながらDXスコア70点以上を達成している自治体が48団体もあることです。財政力だけではDX推進の成否は決まらないことがわかります。

財政力指数0.4未満でDXスコア70点超の自治体が48団体。トップは志布志市(鹿児島県)のDXスコア84.2点(財政力指数0.38)です。

財政力指数帯別のDXスコア分布

財政力指数を6段階に分け、各帯のDXスコア平均値・最高値・最低値を整理しました。財政力指数が高くなるほどDXスコアの平均も上がる傾向はありますが、どの帯にも高スコアの自治体が存在しています。

財政力指数自治体数DX平均最高最低
0.2未満23441.580.713.1
0.2〜0.453947.184.212.6
0.4〜0.637955.993.016.7
0.6〜0.829958.691.821.0
0.8〜1.021165.395.621.2
1.0以上7462.789.222.5

財政力指数0.4未満 DXスコア上位20自治体

順位自治体都道府県DXスコア財政力体制技術マイナ32手続利用率
1志布志市鹿児島県84.20.388610085.250100.0
2三次市広島県81.30.348610082.038100.0
3上天草市熊本県81.20.255710080.674100.0
4下呂市岐阜県81.00.338610082.636100.0
5天草市熊本県81.00.278610082.636100.0
6郡上市岐阜県81.00.328610082.536100.0
7宇和島市愛媛県80.70.348610081.535100.0
8臼杵市大分県80.30.38866785.164100.0
9大田市島根県79.20.28868381.145100.0
10村上市新潟県78.70.348610083.424100.0
11江津市島根県77.70.34868384.235100.0
12白石町佐賀県77.60.348610086.616100.0
13宇陀市奈良県77.20.281006779.135100.0
14鏡野町岡山県77.10.307110084.633100.0
15神石高原町広島県76.70.21868383.031100.0
16飛騨市岐阜県76.10.32718386.843100.0
17十島村鹿児島県76.00.07865088.410056.7
18長門市山口県76.00.33868386.025100.0
19八女市福岡県75.80.39868382.127100.0
20庄原市広島県75.30.26868379.027100.0

5カテゴリ分析:何が高いのか

上位20自治体の各カテゴリ平均を全国平均と比較すると、興味深いパターンが見えてきます。

カテゴリ上位20平均全国平均
DX推進体制83.657.1+26.5
AI/RPA/テレワーク88.349.8+38.5
マイナンバーカード83.381.5+1.8
32手続オンライン化40.532.9+7.6
オンライン利用率97.850.3+47.5

最も全国平均を上回っているのはオンライン利用率(+47.5pt)です。財政力が低い自治体がDXで成果を上げる鍵は、大きな予算を必要としない組織的な推進体制の整備マイナンバーカードの普及促進にあると考えられます。

逆パターン:財政力が高いのにDXスコアが低い自治体

一方で、財政力指数0.8以上の比較的裕福な自治体の中にも、DXスコアが低い事例があります。以下は財政力指数0.8以上でDXスコアが低い順のワースト10です。

順位自治体都道府県DXスコア財政力指数人口
1西郷村福島県21.20.9520,808
2飛島村愛知県22.52.104,575
3聖籠町新潟県26.81.0714,259
4久御山町京都府28.41.1215,250
5おおい町福井県31.10.997,910
6山中湖村山梨県33.01.195,179
7田尻町大阪府34.01.438,434
8高崎市群馬県34.20.83372,973
9上野村群馬県35.40.911,128
10大治町愛知県35.70.8332,399

これらの自治体は財源に余裕がある一方で、DX推進体制の構築やオンライン化の取り組みが遅れている可能性があります。予算があっても、それをDXに振り向ける意思決定がなければ成果にはつながりません。

まとめ:財政力だけがDXの壁ではない

データが示しているのは、財政力はDX推進の十分条件でも必要条件でもないということです。財政力指数0.4未満でも高スコアを達成する自治体がある一方、財政力が高くても低スコアにとどまる自治体があります。

DX推進で成果を上げている自治体に共通するのは、CIO(最高情報責任者)の任命、外部デジタル人材の登用、全庁的な推進方針の策定といった「お金のかからない」組織改革を先行して実施していることです。また、国のデジタル田園都市国家構想交付金やJ-LIS(地方公共団体情報システム機構)の支援制度を積極的に活用している点も共通しています。

財政力ではなく「意思決定のスピード」と「制度活用力」がDX推進の鍵であることが、データから読み取れます。