はじめに
「高齢化が進む自治体はデジタル化も遅れがち」──直感的にはそう思えますが、実際のデータはどうでしょうか。本コラムでは、全国1,741市区町村のDXスコアと高齢化率の関係を分析し、その実態をデータで検証します。
高齢者が多い自治体ほどオンライン手続きの利用率は低くなりそうですが、DX推進体制やマイナンバーカード普及率など、住民の年齢構成とは独立した指標もあります。高齢化率が高くてもDXで成果を上げている自治体から、そのヒントを探ります。
データ概要
分析対象は高齢化率・人口データのある1,736自治体です。全自治体の平均DXスコアは53.1点、平均高齢化率は34.7%です。
高齢化率帯別のDXスコア分布
高齢化率を5段階に分け、各帯のDXスコア平均値・最高値・最低値を整理しました。
| 高齢化率 | 自治体数 | DX平均 | 最高 | 最低 |
|---|---|---|---|---|
| 20%未満 | 39 | 61.4 | 81.9 | 20.6 |
| 20〜30% | 471 | 61.8 | 95.6 | 16.7 |
| 30〜40% | 781 | 52.5 | 93.0 | 14.7 |
| 40〜50% | 385 | 45.3 | 81.2 | 12.6 |
| 50%以上 | 60 | 37.7 | 74.3 | 14.3 |
高齢化率が高いほどDXスコアの平均は下がる傾向がありますが、高齢化率40%以上の帯でも最高スコアは81.2点に達しています。高齢化率だけでDX推進の可否は決まりません。
高齢化率40%以上でDXスコアが高い自治体TOP20
高齢化率40%以上にもかかわらずDXスコアが高い自治体をランキングで紹介します。
| 順位 | 自治体 | 都道府県 | DXスコア | 高齢化率 | 人口 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 上天草市 | 熊本県 | 81.2 | 42.0% | 24,563 |
| 2 | 天草市 | 熊本県 | 81.0 | 40.9% | 75,783 |
| 3 | 下呂市 | 岐阜県 | 81.0 | 40.4% | 30,428 |
| 4 | 臼杵市 | 大分県 | 80.3 | 41.0% | 36,158 |
| 5 | 大田市 | 島根県 | 79.2 | 40.4% | 32,846 |
| 6 | 北杜市 | 山梨県 | 77.8 | 40.0% | 44,053 |
| 7 | 宇陀市 | 奈良県 | 77.2 | 41.9% | 28,121 |
| 8 | 神石高原町 | 広島県 | 76.7 | 49.2% | 8,250 |
| 9 | 飛騨市 | 岐阜県 | 76.1 | 40.4% | 22,538 |
| 10 | 長門市 | 山口県 | 76.0 | 44.0% | 32,519 |
| 11 | 庄原市 | 広島県 | 75.3 | 43.3% | 33,633 |
| 12 | 牟岐町 | 徳島県 | 74.3 | 53.9% | 3,743 |
| 13 | 江田島市 | 広島県 | 74.3 | 43.6% | 21,930 |
| 14 | 佐渡市 | 新潟県 | 73.4 | 42.6% | 51,492 |
| 15 | 竹原市 | 広島県 | 73.0 | 42.0% | 23,993 |
| 16 | 新見市 | 岡山県 | 73.0 | 41.3% | 28,079 |
| 17 | 高梁市 | 岡山県 | 72.7 | 40.9% | 29,072 |
| 18 | 佐伯市 | 大分県 | 72.2 | 40.9% | 66,851 |
| 19 | 平戸市 | 長崎県 | 72.1 | 41.4% | 29,365 |
| 20 | 美波町 | 徳島県 | 71.2 | 49.4% | 6,222 |
5カテゴリ分析:高齢化が進んでもDXが進む自治体は何が違うのか
上記TOP20自治体の各カテゴリ平均を全国平均と比較します。
| カテゴリ | TOP20平均 | 全国平均 | 差 |
|---|---|---|---|
| DX推進体制 | 79.3 | 57.1 | +22.2 |
| AI/RPA/テレワーク | 81.7 | 49.9 | +31.8 |
| マイナンバーカード | 80.9 | 81.5 | -0.6 |
| 32手続オンライン化 | 38.1 | 32.8 | +5.3 |
| オンライン利用率 | 100.0 | 50.4 | +49.6 |
高齢化率が高い自治体は、オンライン利用率では不利になりやすい一方、DX推進体制の整備やマイナンバーカードの普及促進といった行政側の努力で総合スコアを押し上げていることがわかります。住民の年齢構成に左右されにくい指標で着実に成果を積み上げている点が特徴的です。
逆パターン:若い自治体なのにDXスコアが低いケース
一方で、高齢化率20%未満の比較的若い自治体の中にも、DXスコアが低い事例があります。
| 順位 | 自治体 | 都道府県 | DXスコア | 高齢化率 | 人口 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 小笠原村 | 東京都 | 20.6 | 14.1% | 2,929 |
| 2 | 御蔵島村 | 東京都 | 28.4 | 18.0% | 323 |
| 3 | 粕屋町 | 福岡県 | 35.7 | 17.7% | 48,190 |
| 4 | 青ヶ島村 | 東京都 | 36.2 | 18.3% | 169 |
| 5 | 中城村 | 沖縄県 | 41.8 | 18.6% | 22,157 |
| 6 | 昭和町 | 山梨県 | 42.5 | 19.1% | 20,909 |
| 7 | 南風原町 | 沖縄県 | 46.0 | 19.4% | 40,440 |
| 8 | 宜野湾市 | 沖縄県 | 53.1 | 18.9% | 100,125 |
| 9 | 新宮町 | 福岡県 | 53.2 | 18.3% | 32,927 |
| 10 | 朝日町 | 三重県 | 53.6 | 19.1% | 11,021 |
これらの自治体は若い住民が多く潜在的なデジタル利用者は豊富ですが、行政側のDX推進体制や手続きのオンライン化が進んでいない可能性があります。若い住民層が多いという「恵まれた環境」を活かしきれていない状況です。
まとめ:高齢化はDXの壁ではない
データが示す結論は明確です。高齢化率はDX推進の決定的な障壁ではありません。高齢化率40%以上でもDXスコア上位に入る自治体が複数存在し、逆に若い自治体でもDXが遅れるケースがあります。
高齢化が進む自治体がDXで成果を上げるポイントは3つあります。
1. 住民の年齢構成に依存しない指標を先行して改善する:DX推進体制の整備やAI・RPA導入は、住民の年齢構成に関係なく行政の意思決定で推進できます。
2. マイナンバーカードの普及を丁寧に進める:高齢者向けの申請サポートや出張申請受付を通じて、高い普及率を達成している自治体があります。
3. オンライン手続きの利用を段階的に促進する:タブレット端末の設置や操作支援員の配置など、デジタルデバイド対策と並行して利用率向上に取り組むことが重要です。
高齢化は日本全体の課題ですが、その中でもDXを着実に進める自治体から学べることは多いはずです。