お金がないほどDXが進む?

「財政に余裕のある自治体ほどDXが進んでいる」──一見もっともらしいこの仮説は、データで見ると必ずしも正しくありません。全国1,741市区町村のDXスコアと財政力指数を突き合わせると、財政力指数が全国平均(0.50)を下回りながら、DXスコアで全国上位30%に入る自治体が75団体も存在します。

むしろ「お金がないからこそDXで効率化しなければならない」という切迫感が、改革のエンジンになっているケースがあるのです。

本コラムでは、人口3万人以上・財政力指数が全国平均以下・DXスコア上位30%(62.9点以上)という条件で抽出した自治体のうち、財政力とDXスコアの乖離が大きい上位5自治体の具体的な取り組みを紹介します。

抽出条件と背景データ

抽出条件
・人口:3万人以上(一定の行政規模がある自治体に限定)
・財政力指数:全国平均0.50以下
・DXスコア:上位30%(62.9点以上)
・ランキング基準:財政力の低さとDXスコアの高さの乖離度(Zスコア合計)

全国1,714自治体(有効データ)のうち、上記3条件をすべて満たすのは75自治体です。財政力指数の全国平均は0.50、DXスコアの全国平均は52.9点。上位30%に入るには62.9点以上が必要です。

順位自治体都道府県人口財政力指数DXスコア全国順位
1山梨市山梨県33,4350.4291.74位
2天草市熊本県75,7830.2781.068位
3三次市広島県50,6810.3481.362位
4郡上市岐阜県38,9970.3281.069位
5大田市島根県32,8460.2879.297位

TOP5 自治体の取り組み

1

山梨市 山梨県

DXスコア91.7
全国順位4位
財政力指数0.42
人口33,435

全国1,741自治体中4位という驚異的なスコアを誇る山梨市。財政力指数は全国平均を下回る0.42ですが、DX推進体制・AI/RPA導入・オンライン利用率の3カテゴリで満点(100点)を達成しています。

「デジタル改善目安箱」を設置し、市民からアナログな行政手続きの改善提案を直接受け付ける仕組みが特徴的です。「山梨市DX推進計画」に基づき、業務生産性の最大化を目標に掲げ、職員のDXリテラシー向上と市民サービスのデジタル化を両輪で推進しています。

2

天草市 熊本県

DXスコア81.0
全国順位68位
財政力指数0.27
人口75,783

離島を多く抱える天草市は、財政力指数0.27と全国平均の半分程度。にもかかわらず、AI/RPA導入で満点を獲得するなど積極的なDX投資を行っています。

DX推進アドバイザーを外部から委嘱し、専門的な知見を取り入れながら改革を進めているのが特徴です。国・地方共通チャットボット「Govbot」を導入し24時間対応を実現。さらにコミュニティセンター使用料のコンビニ・スマホ決済にも対応し、離島・過疎地域のハンデをデジタルで克服しています。

3

三次市 広島県

DXスコア81.3
全国順位62位
財政力指数0.34
人口50,681

DX全国1位の広島県にあって、県内でも高い存在感を示す三次市。注目すべきは、国のデジタル庁設立(令和3年)より先駆け、令和2年8月にDX推進本部を設立した先見性です。

「田園都市×デジタル〜つながるみよし」をスローガンに、窓口のキャッシュレス化、電子申請の拡充、高齢者向けスマホ教室の実施など、地域特性に合わせた施策を展開。首長のリーダーシップが明確に反映された事例といえます。

4

郡上市 岐阜県

DXスコア81.0
全国順位69位
財政力指数0.32
人口38,997

「郡上おどり」で知られる郡上市は、中山間地域でありながらAI/RPA導入スコア100点を達成。DX推進体制も85.7点と高水準です。

電子契約サービスを導入し紙・押印による契約を廃止。マイナンバーカードを使った証明書のオンライン申請(24時間対応)公式アプリを運用し、広大な市域に分散する住民がどこからでも行政手続きにアクセスできる環境を整備しています。面積が広い自治体ほど、窓口に来なくても済むDXの恩恵は大きくなります。

5

大田市 島根県

DXスコア79.2
全国順位97位
財政力指数0.28
人口32,846

世界遺産・石見銀山を擁する大田市。財政力指数0.28は今回のTOP5で2番目に低い数値ですが、DXスコアは全国97位と上位5.7%に位置しています。

長期計画ではなく毎年度見直す柔軟な「情報化推進指針」を策定し、最新の技術動向に即した継続的なデジタル化を推進しています。環境変化に即応できる体制を構築することで、限られた予算でも常に最適な投資判断ができる仕組みを実現しています。

5自治体に見える3つの共通点

1. 効率化への切迫したニーズ

5自治体はいずれも人口減少・高齢化が進む地方都市です。限られた職員数で行政サービスを維持するためには、DXによる業務効率化が「あれば便利」ではなく「なければ立ち行かない」レベルの課題です。この切迫感がDX投資の優先度を上げ、全庁的な推進体制の構築を後押ししています。実際、5自治体すべてがDX推進体制スコアで85点以上を達成しています。

2. 首長のリーダーシップ

三次市が国より先にDX推進本部を設立したように、トップダウンの意思決定がDX推進の速度を左右しています。山梨市の「デジタル改善目安箱」、天草市のDX推進アドバイザー委嘱、郡上市の電子契約導入も、いずれも首長や幹部の強いコミットメントなしには実現しない施策です。財政力が低い自治体では特に、「何に投資するか」の優先順位づけが成果を分けることがわかります。

3. 国の交付金・広域連携の活用

大田市がIPAや島根県の枠組みを活用しているように、単独の財源に頼らず国のデジタル田園都市国家構想交付金J-LIS(地方公共団体情報システム機構)の支援制度、県レベルの広域連携を最大限に活用しています。天草市のGovbot導入も国の共通基盤を利用した施策です。「予算がないからDXできない」のではなく、外部リソースを引き込む力がDX成功の鍵になっています。

まとめ:あなたの自治体はどうですか?

本コラムで取り上げた5自治体が示しているのは、DX推進の成否を分けるのは財政力ではなく「意思決定のスピード」と「制度活用力」だということです。お金がなくても、首長のリーダーシップ、全庁的な推進体制、外部リソースの活用という3要素が揃えば、全国上位のDXスコアを達成できることがデータで証明されています。

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