神奈川県のDX現況:全国7位の実力と課題

神奈川県は総合DXスコア62.6点で、全国47都道府県中7位にランクされています。全国平均53.1点を大きく上回る実績ですが、県内33市区町村のDX推進状況は極めて二極化しています。横浜市の91.6点(全国5位)から真鶴町の32.2点(全国1523位)まで、約60点の開きがある状況は、神奈川県全体のDX推進において極めて重要な課題です。

県内でスコア60点以上の自治体は19市区町村に限定されており、残る14市区町村の底上げが緊急の経営課題となっています。特に人口規模の小さい町村ほど低スコア傾向が強く、「小規模自治体のDXデジタル格差」という新たな地域課題が顕在化しています。

TOP5市区町村の分析:横浜市の圧倒的優位性

順位 自治体名 スコア 全国順位 人口
1位 横浜市 91.6点 全国5位 3,777,491人
2位 横須賀市 82.4点 全国46位 388,078人
3位 川崎市 81.9点 全国51位 1,538,262人
4位 伊勢原市 81.1点 全国66位 101,780人
5位 綾瀬市 78.4点 全国109位 83,913人
神奈川県内で全国TOP100入りを達成したのは4市区町村のみ。横浜市は県内で唯一、「DX推進体制」「AI/RPA/テレワーク」「オンライン利用率」の三項目で満点(またはそれに近い点数)を獲得しています。

横浜市の91.6点は、全国平均をはるかに上回る成績です。特筆すべき点として、DX推進体制とAI/RPA/テレワーク導入が100.0点を記録し、オンライン利用率も100.0点を達成しています。これは行政内部のデジタル基盤が完全に整備されている一方で、市民がそれらのサービスを積極的に利用している状態を示しています。

横須賀市(82.4点)と川崎市(81.9点)も優位性を保っていますが、両市とも「32手続オンライン化」の項目で若干の遅れが見られます。横須賀市が63.0点、川崎市が60.0点である一方、横浜市は72.0点を確保しており、オンライン手続の充実度で三政令市の中で横浜市の優位性が際立っています。

興味深い点として、伊勢原市(81.1点)と綾瀬市(78.4点)が、人口規模でははるかに小さいながら、川崎市と同等あるいは上回るスコアを達成していることです。これは自治体規模ではなく、DX戦略と実行体制の質が重要であることを示唆しています。

中位層の多様な課題:オンライン利用率の低さが足かせ

スコア55~75点の中位層(6位~18位)に着目すると、自治体ごとに異なる課題パターンが明確になります。

藤沢市(68.3点、全国339位)、平塚市(65.9点、全国426位)、相模原市(65.0点、全国455位)といった中核市・政令市クラスでさえ、オンライン利用率で大きく足を引っ張られています。相模原市は人口725,493人という県内第3位の規模を持ちながら、オンライン利用率が11.5点という極めて低い水準にあります。これは「デジタルサービスを提供してはいるが、市民がそれを活用していない」という、需要側の課題を示唆しています。

対照的に、小規模自治体の中には「オンライン利用率が100.0点」という極めて高い数値を示す自治体があります。中井町(71.9点)、葉山町(70.8点)、開成町(64.3点)などがこれに該当します。これらの自治体では、デジタルサービスそのものはまだ限定的ですが、提供されたサービスについては市民の利用率が非常に高いという特徴があります。

低位層の共通課題:DX推進体制の欠落と手続オンライン化の遅れ

スコア50点未満の自治体(28位~33位)に共通して見られるのは、「DX推進体制」と「AI/RPA/テレワーク」の低さです。

特に南足柄市(49.2点)、清川村(47.4点)、座間市(46.4点)、逗子市(45.8点)、松田町(38.3点)、真鶴町(32.2点)では、DX推進体制が14.3~57.1点に留まっており、組織的なDX戦略の欠如が明らかです。同時に、これらの自治体では「32手続オンライン化」も26.0~55.0点と低く、市民が利用可能なデジタルサービスそのものが不足しています。

真鶴町(32.2点)は「32手続オンライン化」でわずか12.0点、「オンライン利用率」で0.0点という、ほぼDXが進展していない状態です。一方で「マイナンバーカード」は81.3点と高く、カードの交付状況は全国水準ですが、それを活用するシステムが整備されていない矛盾が示唆されています。

これらの低位層自治体の多くは、人口10,000人未満の小規模町村です。人的リソース不足、予算制約、技術者の確保難といった構造的課題により、DX推進体制そのものを構築することが困難な状況が想定されます。

神奈川県全体への示唆と求められる戦略

神奈川県のDXランキング分析から、以下の重要な示唆が導き出されます。

第一に、「DX推進体制」の構築が最優先課題です。高スコア自治体ではこの項目で85.7~100.0点を確保しており、低スコア自治体では14.3~42.9点に留まっています。DX推進体制とは単なる専任部門の設置ではなく、組織的なデジタル戦略、CIOまたはそれに相当する責任者の配置、予算確保、人材育成を含む包括的な取り組みです。

第二に、「AI/RPA/テレワーク」の導入状況にばらつきが大きく、特に小規模町村で低迷しています。これらは単なる効率化ツールではなく、限定的な人的リソースで行政機能を維持するための戦略的投資です。県が主導して共同クラウドプラットフォームの構築や、複数町村による共同運用モデルを検討する必要があります。

第三に、「オンライン利用率」の向上が重要です。特に中核市クラスで利用率が低いことは、市民への周知不足や、デジタルリテラシーの差による利用躊躇を示唆しています。単にサービスを提供するのではなく、利用促進キャンペーン、シニア層への支援、複数の利用経路の確保が求められます。

第四に、小規模自治体への支援体制の強化は緊急課題です。県レベルでの標準化されたデジタルサービスの提供、広域連携による人材共有、クラウドベースの共通システム導入などの支援が不可欠です。

神奈川県は全国7位という優位性を保ちながらも、県内の著しい不均衡を放置すれば、県民全体のDX恩恵に大きなばらつきが生じます。トップランナーである横浜市のベストプラクティスを他自治体に水平展開し、県全体の底上げを実現することが、今後の重要な課題となります。

データ出典:総務省 令和6年度調査(地域スコア集計)